2018年10月14日

ジャズオルガンとして見たRoland VR-09

手で持ち運べる1段のハモンドクローンというと一般にはNord ElectroかHammond SK-1の二択だと思います。しかし、ちょっと前に楽器屋でRolandのVR-09を試奏してみたところちょっといい感じ、かつ、新モデルのVR-09Bが出て型落ち化して安くなっていたことから衝動買いしてしまいました。以下、ジャズオルガンとして見たVR-09のレビューです。VR-09はピアノ音もシンセ音も出ますがあくまでもジャズオルガンとしての使用法に限定して見ていきます。

まず、VR-09とVR-09Bの違いですが中身は一緒でデザインがちょっとだけ違うだけです(ソフトウェアを最新にアップデートすれば両者は同等になります)。いずれにせよ、デザインはちょっと微妙で使いにくくはないですが高級感には欠けます。
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重量は5.5kgと大変軽いです。SK-1も7kgと結構軽いですが、持ち運びを考えると1kgでも軽い方がいいですよね。ピッチベンドが付いてる分だけSK-1よりちょっと幅広です。なお、単3電池6本でも動くので普段しまって置いてたまに机の上に出して弾くなんて場合にも便利です。

キーボードは奥行きがちょっと狭くストロークが短いのでちょっと違和感があります。オルガンのみであればよいのですが、ピアノも弾く人はちょっとつらいかも。当然ですがオルガン使用時のキー発音位置は浅いです。ローランドではクイックファイアリング鍵盤と呼んでいます。オルガン特有の演奏には不可欠です。なお、ウォーターフォールキーボードではないですが鍵盤の角が立ってないのでパームグリッサンドは問題なくできます。

ペダル鍵盤入力がRoland独自のPK端子となっていますが、PK端子はMIDI端子にコントロールペダル用の入力を加えたものなので普通のMIDIペダル鍵盤とMIDIケーブルを刺せば動きます。実際、HAMMONDのXPK-100をつないで動かしてます。PK端子にMIDIをつなぐのはローランドは保証はしていないと思うのですが、ネットで見つけたVK-77の回路図を見るとMIDI INのMIDI信号とPK端子の該当ピンがパラで直結してましたので問題ないと思います。
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ドローバーの音色はJazz Organ, Rock Organ, Transistor Organから選べます。Rock Organでも全然ジャズに使えます(むしろ音が太いのでこっちの方が好み)。オルガン音色のエディットはLeakage Level、On/Off Click Level、EQ(Hi/Low)と最小限です。いずれもメニュー画面に入らないと変更できないの不便です。また、ビブラートのオンオフ自体はパネルのスイッチからできますが、タイプの切り替えと上限鍵盤のどっち(または両方)に効かすかはメニュー画面に入らないと切り替えられないので不便です。メトロノーム機能が入って練習に便利なんですが、やはりオンオフはメニュー画面の奥に入らないとできないのでこれまた不便です。

音色は、VK-8から継承されているいかにもローランドぽい、エグさには欠けるがファットでウォームなサウンドで個人的には嫌いではありません。SK-1よりバンド内では音が立つ(特にRock Organのドローバーを選択した場合)と思います。レスリーシミュレーションはなかなかできが良く、特に最新のアップデートで加えられたTYPE-3の音色が結構使えます。ピッチベンダーでレスリーのFAST/SLOWが切り替えられますので、本物ハモンドのハーフムーンスイッチ的に使用できます。

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パネルのツマミでリバーブ、オーバードライブ、トーン等がリアルタイムで調整できます。このトーンは低音と高音が同時に持ち上がるタイプです(できればLOWとHIGHで分けて欲しかった)。

ということでなかなかナイスなのですが、ジャズオルガン用キーボードとして現場で使う上で重大な欠点があります。上記のように、ビブラートの切り替え等がメニュー画面に入らないとできませんので実際には、セッティングをプログラムにメモリーして切り替えて使うことになると思いますが、VR-09ではほぼすべてのセッティングがプログラムとしてメモリーされてしまいます。

つまり、プログラム1番で弾いてて、ちょっとリバーブが足りないんでツマミをいじってリアルタイムで足すとします。ここで、たとえばビブラートの設定を変えるためにプログラム2番に切り替えるとこのリバーブの設定は2番に記憶されていた状態に戻ってしまいます。SK-1の場合は、プログラムを切り替えた時にレスリーやエフェクトの設定まで切り替えるかどうかを細かく設定できるのですが、その機能はVR-09にはありません(バージョンアップで対応してくんないかなー)。おそらく、ロックやポップスのバンド内でのように、この曲はこの設定というのを決め打ちでプログラムしておくことのみを想定していて、ジャズのように演奏中に演奏者の判断で設定をころころ切り替えるというのは想定していないのではないかと思います。

サウンドの例として自分の演奏動画を上げてみます。Rock Organのドローバーを使用、内蔵エフェクトのみ使用でビデオカメラ直結で録音しています。ドラム音は内蔵のリズムマシンです。なお、リズムパターンやテンポもプログラムに記憶されますので、この動画のように演奏中にプログラムを切り替えるときは事前にすべてのプログラムに同じリズムパターンとテンポを記憶しておかなければなりません(めんどくさいです)。


ということで家で練習したりする分には良いのですが、上記理由によりジャズオルガンのライブで単体で使うにはちょっと厳しい感じです。

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posted by kurikiyo at 15:35| Comment(0) | ジャズオルガン機材

2018年10月06日

Hammond SK-1の音立たない問題対策

ずっとライブ用に使っているHammond SK-1 軽量・多機能で、音もそんなに悪くないのですが、どうも音が立ちません。特に、ドローバー下3本+パーカッションのいわゆるジミースミスセッティングでソロを取ると、ソロ音が埋もれてしまいます。本体のオーバードライブで音を太くしようとしても全体がつぶれる感じであまり効果的ではありません。EQも高音上げすぎるとデジタル領域で歪んでしまいます。どうも、本体のアナログアンプ部分の設計がイマイチなのではないかという気がします。

オルガニストの西川直人さんのブログで、ベリンガーのBDI21というベースアンプシミュレーターを通すとちょっとマシになるという情報があったので、結構お安いこともあり買ってみました。BDI21は有名なアンプシミュレーターSANSAMPのパクリみたいな製品です。確かに、PRESENCEというツマミを上げ気味にすると、エキサイター的な効果により、右手ソロ音域が立つと共にいい感じで歪みます。チューブアンプでパーカッションがサチる感じがうまく出ます。

ご参考までに先日やったライブの映像ですが、SK-1→BDI21→MINI VENT2→PA直結でアンプは使ってないのですが、結構いい出音になってるかと思います。

原理的にはどんな音でも作れるデジタルキーボードに何で外付けエフェクターつけなきゃならんのか、ハモンド本家なのにもう少し何とかならんものかとも思いますが、しばらくはこのセッティングでやってこうかと思います。

posted by kurikiyo at 14:28| Comment(1) | ジャズオルガン機材

2018年09月06日

サックス3つのBにNO!

サックスの奏法についてもいろいろ書いていこうと思います。自分もウン10年吹いている割にはまだまだ修行中ですが、自分なりの「気づき」をご紹介できればと思います。

旧ブログで「サックス"3ない運動"展開中」という記事を書いてます。初心者ぽい演奏から脱却するための重要なポイントとして「かまない」「はねない」「しゃくらない」という3つの要素について書きました。

大事な話だと思うのでここでも再度書きますが、「かまない」→NO Bite、「はねない」→NO Bounce、「しゃくらない」→NO Bendとすると、全部頭文字Bになりますので「3つのB」をやめると考えると覚えやすいかと思います。

1. NO Bite(かまない)
サックス演奏の大原則中の大原則です。だけど、気をつけて練習していてもついつい本番だとかみがちになります(特にG以上の高音域)。どんなにばっちりのセッティングで吹いていても、かんだとたんに音がやせて冴えない音になってしまいます。「(直感とは逆に)低音域ではアンブシュアを締めて、高音域では緩める」というデイブ・リーブマンの教えを守らなければなりません。

2. NO Bounce(はねない)
これはサックスに限らずあらゆるソロ楽器に共通ですね。アマチュアの演奏でそれなりにかっこいフレーズが出ているのに、イマイチ素人くさいという場合、ちゃんかちゃんかはねすぎのケースが多いと思います。スイングジャズやデキシーでもやっているのなら別ですが、コンテンポラリーなジャズをやっているのなら8分音符は完全イーブンくらいのつもりでちょうどいいと思います。もちろん、積極的表現として敢えてはねるフレーズを吹く(弾く)ことはあると思いますが、それは常にちゃんかちゃんかはねているのとは違います。ハル・ギャルパーの教え「ミディアム以上の曲の8分音符はハーフテンポでカウントしてあたかもバラードの16分音符のように吹く」を肝に銘じたいです。

3. NO Bend-up(しゃくらない)
フレーズの頭をしゃくりあげるのは本来Scoopというべきですが頭文字Bに合わせるために便宜上Bend-upとしましょうw。表現方法としてしゃくるのは当然ありなんですが、くせになると常にしゃくって吹くようになってしまいます(特に、高音Bあたりからサイドキーにかけて)。これめちゃダサイです。常にベンドアップしないと吹けないというのは要は音程が取れていないということなので、離れた音程を跳ばすフレーズのエチュードをやりまくるという練習法もありますが、バラードのテーマを絶対しゃくらないように吹き切る練習も良いんじゃないかと思います。

この3つのポイントは基本中の基本なんですが、同時に克服が難しいポイントでもあります。具体的にどういう練習をすればよいかを今後何回かに分けて書いていこうと思います。

posted by kurikiyo at 12:27| Comment(0) | サックス奏法